5月14日(火)、東京・霞が関の東京地方裁判所で、「全国 拉致監禁・強制改宗被害者の会」の後藤徹代表が、自身に対する拉致監禁・棄教強要に関与した親族や新津福音キリスト教会の松永堡智(やすとも)牧師、職業的改宗活動家の宮村峻(たかし)氏などを相手取って起こした民事裁判の第15回口頭弁論が開かれ、後藤徹氏の兄である被告T氏の本人尋問が行われました。
T氏は、後藤氏や妹を統一教会に導きましたが、後に宮村氏の関与により脱会。以後、宮村氏の会社で働きながら、信者の強制棄教に協力してきた人物です。
被告T氏に対する主尋問では、尋問の当初から覇気の感じられないT氏が、被告代理人弁護士の質問に対して棒読みするかのように回答しながら、原告の後藤氏に対する「拉致監禁」の事実をことごとく否認する供述に終始しました。
被告T氏は、原告の後藤氏が「保護」されていた東京都杉並区のマンションで、玄関ドアの内側に南京錠を取り付けていたことを認めましたが、その理由を「統一教会の信者から(話し合いを)妨害されないため」などと回答しました。
後藤氏が「拉致監禁」に抗議して室内で暴れた理由について尋ねられると、「外に出ようとしたのではなく、私への反発から暴れたのでしょう」と男兄弟に対する反発心や被告T氏に対する嫌がらせがその原因であったなどと供述しました。また、後藤氏が「拉致監禁」に抗議して行った3回のハンガーストライキについては、後藤氏がノートや韓国語テキストを要求したことを家族が断ったことが発端だったなどと理由付けしました。
「(後藤氏は)なぜマンションから出て行かなかったのか?」との質問には、「(後藤氏が目指す)家族の救いに支障をきたしてしまう。『氏族メシヤ』の使命を放棄してしまうから」などと、統一教会の教えを一部都合良く利用して供述しました。
午後から行われた被告T氏に対する反対尋問では、原告代理人弁護士からの質問に対し、T氏が答えに窮する場面が度々ありました。
「宮村氏の許可なく親が(話し合いをするマンションから)信者を出した事例が一件でもあるか? 名前を挙げるように」と問い詰められると、「(そのような人は)記憶にない」と回答。後藤氏を自宅で「保護」した時のことを尋ねられ、後藤氏を「保護」するために親族以外に協力に来ていた人物のことを問われると、「気付いたらいた」などと苦し紛れに答える場面もありました。
長期化する「話し合い」の中で、後藤氏の父親が他界しましたが、「偽装脱会」をしていた後藤氏は葬儀にも参加させてもらえませんでした。原告代理人弁護士が「自分の親の葬儀に出るか出ないかは誰が決めることですか?」と問い詰めると、被告T氏は答えに窮した後、信者らが後藤氏を救出に来ることを恐れたなどと述べました。しかし、「脱会した信者を(現役の信者が)奪還した例があったのか?」と問われると、「ない」とあっさり供述しました。
「話し合い」の期間中は、後藤氏に国政選挙などの投票券が渡されることも、自動車免許更新の機会を与えられることもありませんでした。その理由を問われると被告T氏は、「徹との間で話題にも出なかったので」と回答。後藤氏のハンガーストライキに対する「食事制裁」について、後藤氏の微量の食事を前に、同じテーブルで家族が通常の食事をすることに「良心の呵責はなかったのか?」と問われると、「本人のためにやった」などと答えました。
反対尋問の後半、原告代理人弁護士の追求に被告代理人弁護士らが「誤導です!」などと異議を申し立てる場面が度々ありましたが、裁判長はその度、「続けて下さい!」と尋問の続行を命じました。また、異議を述べた被告代理人弁護士に対して原告代理人弁護士が「事実を捻じ曲げるな!」と一喝すると、別の被告代理人弁護士が異議を述べる場面もありましたが、裁判長は受け付けませんでした。
最後に、「(原告の)後藤徹氏が12年5か月もマンションから出られなかったのは原告の意志だと言うのか?」との質問に、T氏は答えに窮しながら「…原告の意志です」と述べました。
次回は、6月3日(月)午前10時から午後5時まで803号法廷で、後藤氏の兄嫁と松永堡智牧師が出廷し、被告本人尋問が行われます。なお、次回法廷での傍聴は抽選になる予定ですので、詳しくは東京地裁の傍聴券交付情報をご確認ください(通常は、開廷時間20分前までに東京地裁玄関前の指定場所で抽選券が配布され、その場で抽選が行われます)。
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