6月3日(月)、東京・霞が関の東京地方裁判所で、「全国 拉致監禁・強制改宗被害者の会」の後藤徹代表が、自身に対する拉致監禁・棄教強要に関与した親族や新津福音キリスト教会の松永堡智(やすとも)牧師、職業的改宗活動家の宮村峻(たかし)氏などを相手取って起こした民事裁判の第16回口頭弁論が開かれ、被告の松永牧師と後藤氏の兄嫁の本人尋問が行われました。
松永牧師は主尋問で、統一教会信者に対する「話し合い」は、あくまでも「家族が主体である」と繰り返し供述し、自らが家族を教唆していた事実を否認。「話し合い」において、「信者の意志に反したことはしてはいけない」などと訴えました。
原告代理人弁護士からの反対尋問では、松永牧師自身が脱会説得のために書き記したノートやメモなどについて問い詰められると、「ある人の体験をまとめたもの」などと第三者に責任転嫁する姿が度々見受けられました。更に追及を受けた松永牧師は、回りくどい物言いを繰り返し、裁判長から「質問に対して結論だけをお答え下さい!」と注意を受ける場面もありました。
また、過去に松永牧師が関わった脱会説得において、「話し合い」をしている信者が「救出依頼のメモ」をマンションの外に投じたという事例が1件あったことを認めた上で、「(信者)本人は監禁だと言うんだけれど…」と、主尋問で否定してきた「信者の意志に反したこと」への自らの関与を示唆する格好となりました。
午後の反対尋問の続きでは、原告側から提出された松永牧師に「保護説得」を受けた多数の信者らの陳述書から、「すべて松永牧師の指示」だったことが指摘されましたが、松永牧師は自らの教唆をことごとく否認。妊娠5か月になる信者の保護説得に関与したことについても、「家族の意向」を理由に挙げましたが、答えに窮している様子も伺えました。
その他、昭和63年に作成されていた信者の陳述書にも松永牧師の脱会説得について、「信者獲得のための卑劣な行為」などと明記されていたことや、松永牧師により脱会させられた元信者が、松永牧師が経営する幼稚園のバスの運転手をさせられていたなどの記載も紹介されましたが、松永牧師は否認を繰り返すばかりでした。
反対尋問の終盤に、後藤氏の家族をはじめ松永牧師が関わった信者の「家族(関係)が滅茶苦茶になるのは、誰の責任なのか?」と問い詰められると、松永牧師は答えに窮してしまいました。
一方、後藤氏の兄嫁は主尋問で、後藤氏が「話し合いを承諾していた」という主張を繰り返しただけでなく、「徹さんに(話し合いが行われている)マンションから出ていくように数え切れないほど言った」などと供述。
反対尋問で兄嫁は、答えにくい質問に対して度々、「私は分からない」と発言しましたが、宮村氏が信者との「話し合い」において、信者に「バカ」などと中傷を行っていたことを一部認める発言も見られました。
後藤氏の「話し合い」が12年5か月にも及んだのは、「(後藤氏が)引きこもっていたからだ」とする被告側の主張に対して、後藤氏の本人尋問の供述が「引きこもっていた人の供述か?」などと問い詰められると、兄嫁は「(後藤氏は尋問を)よく練習したんだな」などととぼけた回答を行いました。
今回の尋問の冒頭、松永牧師の陳述書が5月31日(金)午後5時に原告代理人弁護士に送られてきたことに対し、原告代理人弁護士から異議申し立てがありましたが、最後に裁判長も「(被告側が)陳述書を直前に出すことは甚だ遺憾」と厳重な注意を促しました。
次回は、6月17日(月)午前10時から午後5時まで803号法廷で、後藤氏の妹と宮村氏が出廷し、被告本人尋問が行われます。なお、次回法廷での傍聴は抽選になる予定ですので、詳しくは東京地裁の傍聴券交付情報をご確認ください(通常は、開廷時間20分前までに東京地裁玄関前の指定場所で抽選券が配布され、その場で抽選が行われます)。
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