6月13日(月)、統一教会本部広報局は、2011年3月11日発行の『宗教と現代がわかる本2011』(平凡社)に掲載されている「韓国に渡った統一教会日本人女性信者の実態」というレポートを書いた中西尋子氏に対して、抗議文を送付しました。
このレポートには、虚偽と憶測に基づく偏向した記述が多数みられ、当法人及び当法人信者の名誉を著しく毀損し、また拉致監禁被害者の心情を踏みにじるものです。
広報局は中西氏に誠意ある訂正と謝罪を要求しました。以下に抗議文を掲載します。
抗議及び謝罪要求
2011年6月13日
中西尋子 殿
〒150-0046
東京都渋谷区松濤1-1-2
宗教法人世界基督教統一神霊協会(統一教会)
広報部長 太田朝久
『宗教と現代がわかる本2011』(平凡社)に掲載された「韓国に渡った統一教会日本人女性信者の実態」と題する貴殿のレポートは、虚偽と憶測に基づく偏向した記述が多数みられ、当法人及び当法人信者の名誉を著しく毀損し、違法な拉致監禁・強制改宗の被害者の心情を踏みにじるものです。よって、私たちは以下のように強く抗議するとともに、謝罪を求めます。
1.「霊感商法」「正体を隠した布教」等の記述は事実に反する
貴殿は同レポートで、「統一教会が日本だけで霊感商法を行うのも贖罪させるためである」(190ページ)「霊感商法や正体を隠した布教は現在でも続いている」(196ページ)などと書いたうえで、「相変わらず統一教会は日本においてヒト、カネの収奪を続けている」(196ページ)「統一教会の日本における活動は、宗教の名を借りて植民地時代の怨みをはらすがごとく、ヒト、カネを奪うだけのものである」(197ページ)と主張しています。
当法人が、いわゆる「霊感商法」や「正体隠しの布教」をしている事実はありません。また、当法人が「日本においてヒト、カネの収奪」を行っているなどとの主張は事実無根であり、当法人の名誉を著しく毀損するものです。貴殿はどのような具体的事実及び資料、フィールドワークによって、そのような主張をしているのか明らかにするよう求めるとともに、上記事実無根の主張に対して強く抗議するとともに、謝罪を求めます。
2.拉致監禁の容認は人権侵害であり、差別である
貴殿は同レポートで、「親が入信した子供に対して信仰を再考させようとして話し合いの場を持ち、説得することを統一教会は『拉致監禁』『強制棄教』と主張する」「正体を隠した布教活動、霊感商法など違法行為を続ける教団が『拉致監禁反対』などと言う資格があるのだろうか」(196ページ)と述べています。
前者について、当法人の信者に対する拉致監禁・強制改宗とは、信者の意志に反し、強制的にマンション等の一室に連れ込み、外部との連絡を一切とることができない環境下でその信者が脱会を表明するまで棄教を強要し続ける行為全般を指しており、単なる「話し合いの場」などではありません。当法人が把握している約4300件の被害の中で、そうした事実が法廷で認定されているものもあります。
また、監禁拘束下における強制的脱会説得を受けた元信者が、説得を受けて脱会した後も深刻な「PTSD(心的外傷ストレス障害)」に悩まされるなど、精神的な問題を引き起こしており、元信者が家族といえども監禁拘束して強制的脱会説得は絶対にするべきではないと訴えている事実もあります。
このような事実には敢えて触れないで拉致監禁による強制脱会説得を、「親子の話し合い」などと強弁する貴殿は、フィールドワークによる事実検証が生命視される「宗教社会学」の専門家としての基本姿勢を放棄した、単なる“反統一教会の活動家”であると言わざるをえません。
後者について、貴殿は当法人の信者が拉致監禁されることを当然視する姿勢を表明していますが、違法な拉致監禁を容認することは、当法人の信者には日本国憲法で保障された基本的人権がないと主張しているも同然です。基本的人権は人種、宗教、職業等々、何によっても差別を受けない憲法に保障された日本国民の権利であることは、学者である貴殿であるならば当然承知であるはずです。しかしながら、上記貴殿の差別的主張は、法の下の平等を保障する日本では断じて許されないものであり、当法人信者の人権を踏みにじるものであって、このような差別的主張に対して強く抗議するとともに、謝罪を求めます。
3.悪質な情報操作である
貴殿は、韓国社会にとけ込んで生活している日本人女性信者を対象に現地取材し、『神と霊界への信仰――統一教会における合同結婚式参加者たちの結婚生活』(『先端社会研究第4号』関西学院大学出版会、2006年9月30日)で調査結果を発表しています。
その中で、貴殿は「経済的に楽とはいえないが、耐え忍ぶ生活をしているようには見えない」「夫と些細なことで喧嘩をすることはあるようだが、つらい生活をしているようには見えなかった」(146ページ)と述べ、彼女たちは「すでに家庭の中で国境、民族の壁を越えている。それは、彼女たちにとって『地上天国』への確かな一歩と感じられるであろうし、家庭がささやかな『地上天国』にもなり得る。……彼女たちにとって韓国での結婚生活は意味あるものとなる」(149ページ)とレポートしています。
これはかつて貴殿がフィールドワークによる調査結果から表明していた率直な見解であり、今回のレポートでも「経済的に楽ではない生活であっても、信仰生活はむしろ日本にいたときよりも安定したものになる」(195ページ)とそれを追認する記述がみられます。
ところが、今回のレポートで貴殿は「これは筆者が出会った信者に限ってという限定が必要である」(195ページ)と殊更に強調したうえで、「教義的には申し分ない結婚をしたはずだが、実態は異なる」(同)と主張し、強引に以前とは正反対の結論を導いています。
貴殿は、2008年以降、現地調査を行っておりません。それまでに行った現地調査に基づいて、今回は、以前のレポートと異なる発言をされていることに対して、学者としての見識を疑います。
貴殿が、それまでの主張と反対の結論に導くための根拠として持ち出したのが、当法人の信者が編集している月刊紙『本郷人』に掲載された証しです。
貴殿は「経済的困難はいうに及ばず、夫の飲酒、暴力、失業、借金、病気、傷害、子供の言語発達の遅れ、学力不振、夫婦の不和など多様な問題がみられる」(195ページ)と述べ、「韓日祝福家庭は困難な状況にある」という印象を読者に与えようと努めていますが、貴殿も承知のごとく、『本郷人』に掲載された証しは、互助会精神を高めるため難しい問題を克服したケースを紹介したものです。
貴殿は、その冒頭に書かれた「過去の困難な状況」の部分だけを抜き出し、みんなで助け合った結果「今は幸せになりました」という、事実伝達で最も重要な結論部分を意図的に省いています。これは読者を欺く悪質な情報操作であるばかりではなく、当法人と信者に対する侮辱であり、真理を探究する学者の行いではありません。貴殿のこのような悪質な情報操作とも言えるレポートの内容に対して強く抗議するとともに、謝罪を求めます。
4.最後に
貴殿は以前と全く異なった上記の主張を発表するに際し、当法人に対する直接の取材や追加調査を一切行っていません。これは、フィールドワークを生命視する「宗教社会学」の専門家の行為とは到底信じられません。
貴殿は、「宗教と社会」学会の第14回学術大会(2006年6月4日)において、「『社会問題としての統一協会』の現役信者を調査するわけですから、やはりためらいはかなりありました。……もし論文を書いて『教団を肯定している』と受け取られたら、仕事がなくなったらどうしようか、と思いました。しかし、その心配よりも調査対象への魅力のほうが勝ちまして、調査を始めました」と述べています。
韓国の地で懸命に生きる日本人女性信者の姿に魅了され、率直にそのことを表明した論文を発表した貴殿ですが、ある時点で豹変してしまいました。これは当法人に反対する勢力からの「圧力」に屈し、自らのキャリアを守るという保身のため、学者としての“良心”を売り渡してしまった結果ではないでしょうか。
貴殿の“変節”に誰よりも心を痛めているのが、数年に亘る韓国での調査に誠心誠意協力した現地の日本人女性信者たちです。
「悲惨な家庭が何処にあったのでしょうか? そのような事実が無いことを一番ご存知なのは、長い間淳昌で調査活動をされた中西さんご自身だと思います。中西さんには真実を明らかにして欲しい、それが私たちの誠意に対する人間としての道理だと思います」(現地の女性信者)
貴殿には、こうした悲痛な叫びに真摯に応える義務があります。
以上のように、当法人は貴殿に対し、強く抗議するとともに、誠意ある訂正と謝罪を要求します。本状受領後、1週間以内に文書で回答するよう求めます。
以上