月刊誌『財界にっぽん』8月号に、「日本の人権シリーズ」としては連載17回目となる特別レポートが掲載されました。記事は、ジャーナリストの大野陽一氏によるものです。
同誌7月号に引き続き、ストーカー規制法違反容疑で起訴された宇佐美隆さんが一貫して訴える拉致監禁事件の存在を追及しています。
「弁護士:被告人から婚約指輪を贈ってもらっときは、うれしかったか?
証人K:指輪は好きなので、嬉しかった」
告訴人で元婚約者の女性に対する反対尋問(記者の法廷傍聴メモ)から始まる記事では、拉致監禁の事実をひた隠しにする元婚約者の主張の綻びに焦点を当てています。
記事は、前提となる拉致監禁事件について
「本人には前触れもなく、一瞬のうちに拉致監禁され、社会と隔絶される。人権侵害はいうまでもなく、犯罪そのものである。その悪質さや被害者の恐怖は、北朝鮮による日本人拉致事件の場合とさほど変わらない」と断じ、続いて
「本人だけではない、残された者と葛藤と絶望はどれほどのものか」と、当時の宇佐美隆さんの心情を顧慮しています。
(以下、弁護士は弁、証人はK)
「弁:彼の気持ちとしては、大切な妻が行方不明になったという気持ちは分かりますよね?
K:はい
弁:(音沙汰なしの連絡については)ずっと事務的なもので済むと思っていたのか?
K:会いたくなかったので。」
「弁:脱会届を出した後もなぜ彼に連絡しなかったのか?
K:彼と無関係になりたかった。彼も諦めやすくなると思ったので(そうした)。
弁:彼に対してなぜ直接言わなかったのか?
K:それで諦めてくれると思って。祝福破棄という事務手続きで(済むと思った)。
弁:婚約解消は当事者に意思表示していない。
K:はい。(解消は)それで成り立つと思った。手紙を書いたらまだ想いがあると思われるから、簡潔に事務処理だけにした。」
続いて記事では、警視庁発表のストーカー規制法が定める規制対象は「つきまとい等」の行為、またその動機が「特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」と前提することに言及し、
「例えば、妻の不貞証明のための調査を夫から依頼された探偵が、妻の浮気現場をキャッチしようと、始終夫人を見張ったり、ホテルの中まで追跡したりすることや、あるいは政敵を追い落とすために、その事務所に隠し取りのマイクをしかけたりするのは『ストーカー規制法』の対象にはなっていない。もし、突然の拉致監禁で婚約者が姿を消し、後にも、メモ程度の音信だけしかなかった、ということが事実なら、婚約者の真意を確かめようと奔走することは、決して同規制法の対象には当たらないはず」と、宇佐美隆さんの無罪を論じています。
同誌は、7月1日から全国の主要書店で販売されており、主要図書館でも閲覧することができます。